秋の花火~秋の花火


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俺たちは前回シートを敷いた場所を取られてしまった。一度シートを持ち帰ったから仕方ない。それでも眺めのいい場所を取ることができた。出店も近い。

昼ごろから皆が集まり、まだ明るいうちから酒を飲んでいた。俺はあまり酒が進まなかった。いつもみたいにくだらない話で盛り上がる皆。女将さんも合流して腹も膨れる。出店は皆さすがに気を使って行かなかった。皆、横になったり湖近くではしゃいだり、酔って盛り上がったり、時間まで思い思いに過ごした。

俺はシートの上で横になっていた。皆が話しているのを何気なく聞いていた。

「成樹、ちょっと歩かね?」

悟が俺を誘ってきた。

「ああ。」

なんだか気まずかったが、断るわけにはいかない。俺は起き上がり、靴を履いて悟とその場を離れた。人混みが多い道を歩く悟は黙ったままだ。いつも俺がぺらぺらしゃべっていたから、それがいつも通りの悟だった。

 

そのうち人がいない水辺に来た。

「明日、帰るのか?」

湖を眺めながら悟が聞いてきた。俺は正直まだ決めていなかった。悟とはここ最近気まずいけど、そう思っているのは俺だけだと知っていた。俺次第だってわかっていた。

「・・・。」

俺は何も答えられず沈黙が流れる。

「俺さ、小学校の時、すげー仲良かった奴がいたんだ。初めて親友ができたんだ。嬉しくてさ。毎日学校に行くのが楽しくてさ。でも仲良くなってすぐ、転校しちまった。」

珍しく悟が話し始めた。

「だいたいそうなんだよ。仲良いやつができると、皆離れて行くんだ。・・・だから、ずっと一人ぼっちな気がしてさ。・・・お前とも、離れちゃったから。」

悟は遠くを見つめる。

「だから、お前から連絡が来た時、嬉しかったんだ。俺、本当にお前のこと好きなんだ。友達としてじゃなくてさ。」

悟が誤魔化さずに自分のことを話すのは初めてだ。悟は振り向いて俺を見る。

「好きだ。」

その顔に迷いはなかった。今まで見た悟とは違った。まっすぐで誠実に見えた。

「だからさ、俺のそばにいろよ。」

だけど、俺は何も返す言葉が見つからなかった。まっすぐ俺を見つめてそう言ってくれる男に俺は何も返せなかった。何か言わなくちゃいけないとは思っていたけど、言葉が出てこなかった。俺は悟から目を逸らし、俯いてしまった。

「花火、見せてやりたかったんだ。」

悟が俯く俺にそう言った。俺は顔を上げる。

「お前と見たかったんだ。」

俺はこのままじゃ一番大切な人を傷つける。自分が本当に嫌になって、限界だった。戸惑う俺を見て、悟は優しく微笑み言う。

「先に戻ってるわ。始まる前には、来いよ。」

そのまま、俺を通り過ぎて行ってしまった。優しい笑顔だった。本当に優しい笑顔だった。

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俺は一人、水辺で考えていた。

6年前の冬。あの日から、俺の時計は止まったままだ。ずっと誰にも言えずにいた。誰も聞いてくれる人がいなかった。だから平気なふりして、強がって、無理して笑った。でも、それはその日から始まったことじゃない。付き合っていたころから、本当は辛くて、さみしくて、どうしようもなかった。彼氏は忙しい人で、俺がすぐ隣で傷ついていても、さみしくても、きっと痛くもかゆくもなかっただろう。疲れていると言ってすぐに寝てしまう人だった。

 

俺はわかっていた。この恋がいつか終わってしまうことを。それでもただがむしゃらに、必死にしがみついていた。何のために頑張っていたのか、誰のためにここにいるのか、何も分からないまま。ただ好きで、大好きで。その気持ちだけが俺をつなぎとめていた。彼氏が俺のすべてだった。

6年経った今でも、俺は何一つ乗り越えられず、曖昧な恋愛ばかり繰り返してきた。誰と居ても、どこにいても、前のようには好きになれず、好きになっても傷つくことを恐れ、進めずにいた。どうせ別れるから。そう言い聞かせ、どこか冷めきった恋愛ばかり。平気で人を傷つけたこともあっただろう。自分が傷つかないことだけを考えるのに夢中だった。時間が解決してくれると思っていた。そのうちまた恋愛ができると思っていた。もう、平気だと思っていた。

 

悟は俺に思い出させてくれた。別れた後の辛さと同じくらい、好きになることがこんなに辛いってことを。

 

悟を傷つけるのは辛い。でも、自分が傷つくのは怖い。悟を失うのも嫌だった。まだ何も乗り越えられていない自分がまた同じ痛みを繰り返すのかと思うと、今すぐに逃げ出したかった。いつか別れる日を恐れながら悟を愛していくのかと思うと、恐怖で頭がいっぱいになった。

 

また、そうやってすぐ逃げようとする。結局自分のことが嫌いだって思い知るだけなんだ。いつだって。

 

 

花火会場に近づくにつれ人が増えていく。

そして、俺たちのシートが見えた。悟は皆といる。楽しそうだ。笑っている。俺の前ではあまり見せない笑顔。

 

「ドーン!」

暗くなった空に花火が上がった。同時に歓声が上がる。最初の花火を皮切りに次々と空に広がる花火。

 

その瞬間、悟との思い出が一気に溢れてきた。悟が見せる悲しそうな顔。傷つきやすさや優しいところ。自信がないところも、不器用なところも。いつも見てきた。いつだって見ていた。まっすぐで、一生懸命で、文句も言わずに愚痴るのも嫌いだ。俺のためにいつも自分は後回しで、しつこくて、正直で、かわいくて、強くて、負けず嫌いで。久しぶりに見た悟の恥ずかしそうな顔。朝連れて行ってくれたサーフィンも、俺を汗だくで待っていたことも、高い店を予約してくれたことも、俺のために理不尽な文句に頭を下げたことや、殴ったこと。花火を約束した時の、あの笑顔。

悲しそうな顔も、照れ臭そうに笑う顔も、困った顔をしている時も、真剣な顔も、誤魔化す顔も、思い切り笑う笑顔も。

 

全部、全部好きだった。悲しませたくなかった。

 

歓声はかき消され、ただ季節外れの花火が映る。花火は俺の顔を赤や黄色、青に染める。

俺はいつの間にか、泣いていた。胸が張り裂けそうだった。どうして今まで逃げていたのか。こんなにも悟のことを好きになってしまった。こんなに切なくて、辛くて、今改めて気が付いた。

こんなはずじゃなかったのに。どうしてだろう、気が付いていたはずなのに。こんなに大切だったなんて、こんなに好きだったなんて。頭で考えていた今までが嘘みたいに、悟への思いが溢れてきた。涙が止まらなかった。悟を見つめて、俺は涙をぬぐうことも忘れて自分の気持ちの大きさに唖然とした。

 

もう、帰ろう。

 

今さら自分の気持ちに気が付いた。同時に切なくて、悲しくて、どうしようもなくて。俺は、その場に立っていられず、人ごみに背を向けて、その場を去った。

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