ごめんな~秋の花火


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「この後飲みにつれてってやるよ。」

湯船に二人でつかりながら、悟が口を開く。

「行きつけ?」

「いや、居酒屋だけど旨いらしい。」

「いつもどこで飲んでんの?」

「いつもは同じ店で飲むんだけど、今日は特別だ。」

悟が自慢げに言う。

 

悟の言う居酒屋は俺が昼間に訪れた繁華街にあるようで、風呂からあがり着替えてすぐに出かけた。歩いて向かう。時々ふざけて俺が悟にファイティングポーズで勝負を挑む。俺が攻めても悟はただガードするかよける。子供の相手をされているみたいだった。何気ないやり取りが新鮮で、楽しく感じた。

 

店の前に着くとずいぶん立派な建物だった。居酒屋というよりは料亭みたいな場所。いつも安い飯屋で一緒にご飯を食べていた昔では考えられないような店。

「なんだよ、ここ!?」

俺はさすがに驚いて、声を出す。

「予約しといた。」

悟はあっさりと答える。でも、こんな店きっと高いに違いない。そんなところで食事なんかする奴じゃなかった。悟は基本的に金を食事にかけるような奴じゃなかったし、いつも安く済ませていた。子供もできたし、団地に住んでいたからそんなにお金があるわけじゃないことを知っていた。俺は一人暮らしでお金はそれなりにあったけど、そんな悟に文句を言ったことはない。世間じゃ男二人で飯を食うのにそんな金を使うやつはいないだろうし、俺は悟といる時間が楽しかったから、店なんてどこでもよかった。だから、この店を選んだ悟が不思議でしかたなかった。

「予約したって、高そうだけど?」

俺はさすがに戸惑ってしまった。お金がないわけじゃないけど、まさかこんなに立派な店に連れてこられるとは。

「ああ、別にいいだろ?」

「マジでここ?こんな格好でいいのか?」

俺も悟も不釣り合いな楽な服装だ。

「いいから行くぞ。」

悟は俺の驚きをうっとうしそうに、さっさと中に入ってしまった。俺もおどおどしながらついていく。門をくぐると立派な庭があって、奥に玄関がある。

「福島にこんな店あるんだ。」

俺は独り言のようにつぶやく。玄関を開けると女の人が迎えてくれた。悟が名前を言うと、個室に通された。テーブルとイスが置いてあり、部屋の隅には間接照明。壁には絵が飾られていて、和洋折衷の立派な部屋だった。広さは二人用なのかそれほど広くはないけど、高級ホテルのレストランみたいに豪華な部屋だ。

「なあ、悟?」

「ん?」

「どうしたんだよ?」

俺はまだ驚いていた。こういう場所が慣れていないわけではない。むしろ、慣れていないのは悟のほうだと思う。俺の知っている悟はこんなところには来ない。

「何が?」

「いや、おかしいだろ?こんな店に来たことねーじゃん。」

俺は少し馬鹿にするように、でも食事には期待していたせいかテンションは上がっていて、笑顔をこぼしながら聞いた。

「うるせぇ。」

悟も笑う。

 

その時、部屋の扉が開いた。案内された女の人とは別の人がやってきた。男の人だ。俺は上品に見せようと姿勢を正す。

「お客様、除染作業員でいらっしゃいますか?」

俺はその言葉の意味を理解できなかった。悟の顔を見る。悟は、少し下を向き、間を置いて、か細い声で返事をした。

「・・・はい、そうです。」

「申し訳ありませんが、除染作業員はお断りしておりまして、誠に申し訳ありませんが。」

男の人が最後まで言い終わる前に、悟は立ち上がった。悟を怒らせたと思った。当然だ。いつもなら止めるけど、今回はそんな気はなかった。除染作業員お断りなんて馬鹿げている。

「帰るぞ。」

「え?」

驚いた。悟は立ち上がりそう言うと、誰とも目を合わせず個室から出て行った。店員の男は頭を下げたまま悟を見送った。俺は唖然とした。除染作業員お断りなんてばかばかしいことを言うこの男にも驚いたが、何より悟が黙って帰ったことに驚いた。

俺も後を追った。自然と個室を出るときにため息が出てしまった。店員の男も気づいていただろうけど、俺が出て行くまで頭を上げなかった。

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悟は俺より10個も上なのに、すぐに人にキレる。幼いころはきっと不良だったのだろう。昔、悟が毎日のように女の子と合コンだのクラブだので遊んでいたころ、俺もよく誘われた。興味はなかったけど付き合いで何度か行ったことがある。女の子がいる場では俺も女の子を盛り上げる。男の役目だし。でも、興味はなかった。その場だけ楽しんで、そのあとは特に何もなし。悟も飲みには行っていたけど、そのあと、女の子を持ち帰ったりすることはなかった。

ある時、やってきたのは未成年の女の子たち。ひとしきり飲んだ後に、カラオケに行くことになって、2つの店のどちらにするか迷っていた悟はもちろん安いほうを選んだ。でも、未成年がいるからといって年齢確認の提示を求められた時、悟は店員にキレた。

「俺のどこが未成年なんだよ!」

店員も引かなかった。もちろん店員が正しい。ほかの女の子も、一緒に来ていた男連中も悟の姿にすっかり怯えてしまっていた。そんなときに止めるのはいつも俺の役目。

「もうやめろ、あっちの店行くぞ。」

そう言って悟の体を無理やり引きずり出す。不機嫌な悟を無視して、俺は皆を盛り上げる。悟もそのうち機嫌を直す。日常茶飯事だった。酒癖は良い方じゃない。

 

 

日は暮れて、空は見事なきれいな色に染まっていた。オレンジと青と、何色かはわからないけど奇麗な色が空を染めて、田舎ならではの広い空だった。

でも、悟の背中はいつもより小さかった。俺は悟の後ろを歩いている。悟を見つめながら。

自分の気持ちがよくわからなかった。いろんな感情がこみ上げてきた。店の男に腹が立っていた。悟にも正直腹が立っていた。それと悲しかった。その時、悟が急に立ち止まる。俺も立ち止まる。

「ごめんな。」

そう言うとちらっと俺を見て、すぐに前を向く。そしてまたゆっくり歩き出した。

 

俺は背中を小さくしてとぼとぼ歩く悟を見つめていた。

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