俺は親友を失った。あんな別れ方を選んだ自分のせいだ。
俺は何も変わってない。何も守れないし、何も愛せない。6年前のあの日より、自分に失望した。嫌いな自分を好きになろうと努力してきた。誰かを愛そうとした。変わろうとした。乗り越えようとした。
だけど、何一つなれなかった。
結局、何もしてこなかった。ただ、忘れたくて、逃げていただけだ。思い出そうとしないことが強くなることだと思って、時間が解決してくれると思って、何もしてこなかった。何をしていいかわからないとか、自分は悲劇の主役だとか、そんな風に綺麗事と言い訳ばかり並べて、結局大切なものを失った。
だけど、俺にとってはいつ失うかだけの違いにも思えた。悟と付き合って別れるか、今別れるか。それだけだ。遅いか早いか。それが自分を守る唯一の手段だった。傷が深くならないうちに別れる。悟が好きだったけど、俺は恐怖に勝てなかった。
東京の部屋はもちろん誰もいない。ポストには3カ月分の手紙がぎっしり入っていたが、どれも事務的な請求書や広告ばかりだった。
持って帰ってきた荷物も片付けず、電気も付けず、俺は一人ベッドで横になる。もう涙も出なかった。まるで心をなくしたみたいに静かに天井を見上げた。
すごく、さみしかった。6年前とは何もかも違うのに、まるで同じ日だった。体にしみ込んでいるように同じ時間に感じた。唯一、自分だけが6年前と変わっていない。
ただ、「ごめん」としか言えなかったあの別れを記憶の中で繰り返す。悟はどんな顔をしていたのだろう。どんな気持ちだったのだろう。どれだけ傷ついたのだろう。その傷が少しでも浅ければいいと、身勝手にも願ってしまう。
悟・・・・・・ごめんな。
秋の花火 完
この物語はフィクションです。
登場する個人名・団体名などはすべて架空のものです。
また、物語の場面に登場いたします
福島県相馬市の住民の除染作業員への態度、対応などは
演出上の架空の設定であり、そのような事実はありません。
東北地方太平洋沖地震ならびに、
熊本地震で被災されたすべての皆様の一日も早い復興を
心よりお祈り申し上げます。