時々、笑った。~秋の花火


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悟は朝から仕事に行った。俺を起こさずにそのまま出て行ってしまった。俺は寝ているふりをして悟を見送った。

一日、特にやることもないし、時間を無駄にするのもなんだから、外を走って、部屋で筋トレをして、食事は食堂でとるのはさすがに気まずくて外で済ませた。持ってきていたパソコンで少し仕事もした。家で過ごすような一日。

悟が帰ってくる時間が気になって、夕方は時計ばかり気にしていた。一人でいるとどうしていいのかわからない。一人は慣れていたはずなのに、誰かがいるとなんだかそれだけで嬉しくて、いつの間にか悟を待っていた。

 

17時半ごろ悟が帰ってきた。本当は笑顔で「お帰り」と言いたかったけれど、パソコンを膝に乗せてちらっと悟を見た後、視線をパソコンに戻し、そっけなく迎えた。

「お疲れ。」

その言葉に悟もいつものように返す。

「おう。飯食って風呂行って飲みに行くぞ。」

悟は服を脱ぎながら言う。仕事した後の悟の体は、汗でてかり、筋肉が肥大して、いつもよりごつく見える。自分の欲を抑えながら俺は視線を落とす。

「今日も?」

「ああ、いいだろ?」

「ああ。」

俺は言われた通り、食堂で食事をして風呂に入った。食堂で飲みに行く話になり、昨日飲んでいた人たちも一緒に行くことになった。

 

全部で8人くらい。聞けばいつも飲みに行くメンバーらしい。食堂で何度か会うたびに俺のことを素直に迎えてくれて、すぐに仲良くなれた。年齢はみんなばらばらで、ここへ来た経緯もばらばら。女将さんの言う通り、全員地方から来ていた。社員で地元の人はいないと口をそろえて言う。やはり地元の人はやらないみたいだ。

店に着くと、一人がドアを開けて、中に入る。のれんも出ているし、提灯もある。営業しているようだ。続けて続々と中に入る。中に入った途端、高いテンションで女将さんに挨拶する皆。本当に元気だ。でも、女将さんの返事はない。昨日みたいに入口まで来てはくれなかった。

俺が中に入ると、カウンターの中で何やら男の人達と話している。エプロン姿の中年男性と、スーツ姿の男の人。女将さんはひどく表情を曇らせているのがわかる。あまりじろじろ見るのは失礼だと思い、皆と何気ない会話を交わしながら席に着いた。男の人たちは俺たちがついてすぐに出て行こうとする。

「女将さん、こんばんは!」

俺はすぐに女将さんに挨拶をした。しかし、女将さんは返事をしてくれない。男性二人は俺たちが座る席の間を通って出て行ってしまったが、ひどく感じが悪かった。ふと気がつくと、俺以外のメンバーは少し気まずそうな顔をしている。さっきまで楽しそうに話していたのに、どこか余所余所しく遠慮気味に、声も小さく話している。

俺は察した。きっと地元の人たちだろう。地元の人の前ではこんなに遠慮して生活しているといことに少し戸惑いを感じた。どうしてそんな扱いを受けるのか、理解できなかった。女将さんまで様子が変だった。昨日とは違う。でも、気にしても仕方ない。男性二人が出て行ったのを確認し、俺はメニューを見て注文を考えていた。いつものテンションに、すぐ戻るだろうと思った。女将さんもきっと俺たちの立場を考えてくれてのことだろうと、そう思っていた。

「ごめんね、悪いんだけど・・・帰ってもらえる?」

女将さんがカウンター越しに申し訳なさそうに言った。皆の顔色が一気に変わった。女将さんも皆も俯き、言葉を発しようとはしない。

「え?帰ってって?」

「本当に・・・ごめんなさい。」

俺の問いかけに、女将さんは今にも泣き出しそうなか細い声でそう答える。

俺は思わず、女将さんの言葉を聞いて頭に血が昇ってしまった。

「なんで!」

つい怒鳴ってしまった。女将は一瞬俺の顔を見たが、またすぐに俯く。店の中に気まずい沈黙が流れる。

「・・・うちの店が除染作業員を迎えているせいで、飲み屋街に他のお客さんが来なくなってるって・・・苦情が。」

女将さんは俺たちとは目を合わそうとはしなかった。

「そんな・・・。」

女将さんは本当に申し訳なさそうで、俺もそれ以上言えなくなってしまった。

「帰るぞ。」

最初に口を開いたのは悟だった。そう言って自ら席を立ち、最初に出て行ってしまった。それに続いて次々と席を立つ。肩を落とし出ていく姿は、カッコ悪くて、情けなく見えた。俺は、最後まで席で立ち尽くしていた。女将さんを見つめながら何かを期待していたが、結局女将さんは目を逸らしたまま、俺たちに一言の言葉もなく、全員が出て行っても見送ってはくれなかった。

 

裏切られたみたいでショックだった。俺も最後に店を出た。

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店を出ると皆はさっさと寮へ向かって歩き出していた。悟だけは俺が出てくるのを待っていた。

帰り道、俺はとぼとぼ歩いていた。

「いろいろあるんだよ。俺たちがいたら迷惑だしな。明日からどっか探しとくわ。」

「・・・わかってるよ。」

俺はそれしか返せなかった。女将さんも辛いのだろう。皆だって唯一飲める場所だったのに、ショックだったと思う。そんなことわかっている。皆も女将さんも悪くない。きっと地元の人たちにも事情があって、生活がある。そう、誰も悪くない。でも、やっぱり腹が立つ。勝手な言い分にしか思えなかった。納得できないまま、俺は悟と寮へ帰った。

 

寮へ帰る途中でコンビニに寄った。酒とつまみを買って寮へ帰った。

ここ最近、涼しくて、気持ちがいいから外で飲むことにした。皆はすっかりテンションが下がり部屋へ戻ってしまった。悟と二人で飲み会だ。寮の外に置いてあるベンチに座って乾杯した。

「ここじゃあな、ガソリンスタンド行っても、窓拭いてもらえないんだ。地元の人とか観光客は拭いてもらえるのに、俺たち除染作業員は拭いてもらえないんだよ。なんか変だよな。」

そう言って悟は笑って見せた。珍しく、酔ってないのに自分のことを話し始めた。悟がいつもと違うのが何だか悲しかった。辛さとか、悔しさとか感じているんだろう。それを聞いてあげたいし、受け止めたい。何より、悟がそんなこと感じているのがとてつもなく嫌だった。

「俺たち、悪いことしてないんだけどな。」

悟は弱音こそ吐いているものの、口調はなんだか明るくて、すごく不自然だった。投げやりなようにも見えたけど、普段我慢している悟の、これが精一杯なのかもしれない。

「なんで、キレないの?昔はよくキレてたじゃん。」

「キレてねーし。」

肝心な質問には相変わらず答えない。答えることが、きっと面倒なのだろう。それとも、あまり見せたくないのかもしれない。

「なんだか、いろいろあるんだな。」

俺はそう言って空を見上げた。少し雲が出ている。

「ああ・・・お前さ。」

悟がこっちを見る。

「俺と連絡取ってない間、どうしてた?」

俺も思わず悟を見てしまう。

「どうしてたって・・・まあ、いろいろあったよ。」

言いたくないこともあった。決して人に褒められる生活ではなかった。自分なりに必死だったけど、叶うなら消したい過去だ。俺は視線を逸らす。

「いろいろって、なんだよ?」

悟の口調は少し遠慮気味になる。その質問に俺は少し戸惑う。なんて答えようか迷った。

「・・・まあ・・・たくさん、失敗したし・・・挫折した。」

また、思い出してしまった。

「へぇ・・・・・・お前・・・がんばってたよ。ずっとさ。」

正直、悟のその言葉に驚いた。自分のことをそんな風に思ったことはないし、そんなことを言ってくれる人もいなかった。今までは、何が足りないのかもわからないまま、何かを探していた。そんな日々に疲れて、自分には何も無くなったことに気が付いてから、壊れたものをゼロから作り直すような日々。自分が頑張っているかどうかなんて考える余裕もなかった。

「そんなことない・・・。」

後悔はしてないとか、ここまで来られたのは今までの失敗があったからとかそんなこと言えたらいいのに。後悔してばかりだった。

「俺なんて、大したことない。」

俺は笑顔でごまかす。さっきまでの悟みたいだ。

「・・・俺も、いろいろあった。」

悟は静かな口調で言う。二人して、空を見上げる。

「ああ、いろいろあったよ。」

「・・・お前、がんばってるよ。すげーよ。」

悟はまたそう言ってくれた。思えばいつも俺の味方だった。

「・・・昨日のお店、俺のために探してくれたんだってな。」

「・・・。」

何も答えない。

 

「嬉しかったよ。」

「・・・あっそ。」

 

悟の存在が嬉しかった。ここで悟とこうして話ができてよかった。なんだか妙な空気だけど、不思議と居心地が良かった。悟が親友でいてくれて、それだけで強くなれた気がした。

その後、いつもみたいに何気ない会話をした。ふざけて、悟を馬鹿にして、照れ笑いをして「うるせぇ。」って言ってる悟をまたいじる。悟は時々笑いながら、楽しそうだった。すごく、幸せな気持ちだった。俺も時々、笑った。

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