明るい光に目を覚ました。
目を開けると、白い天井に外から入ってくる明るい陽射し。聞こえてくる鳥のさえずり。
将也は病院のベットの上で目を覚ます。頭には包帯が巻かれ、手にも、胸のあたりにも。腕に点滴が繋げられている。
静かな部屋。清潔感のある白い部屋に将也は一人だ。
他には誰もいない。静かだ。
「俊太郎・・・!」
思い出したかのように呟くと将也は体を起こす。そして腕の点滴を抜いて部屋を飛び出した。
「まーくん!」
部屋を出るとちょうどケイコが座っていた。
「ケイコ!俊太郎は?」
ケイコに駆け寄る将也。ケイコは泣いていたのか目が腫れている。
「・・・来て。」
そう言うと将也が出た隣の部屋へ将也の手を引いた。
中へ入ると、カーテンで仕切られたベットが4つ。
将也はゆっくり中へ入る。
手前のベットにはレイコの姿。将也と同じように至るところに包帯を巻き、口元には痛々しい痣が残っている。将也を見つめていたが、すぐに目を逸らした。将也と同じく病院で配られている寝間着を着て、ベットの上に腰かけていた。
そして手前のベットもう一つには、泉の姿。
「泉。」
将也はどこか安心したように名前を呼んだ。
将也の姿を見て泉は一気に涙を流し、ゆっくり立ち上がると将也の元へ寄ってきて、抱き着いた。声を出すこともなく、静かに泣きながら。
「まーくん。」
奥のカーテンから顔を出したのは七海だ。七海だけは特に目立って大きな外傷も無い様で、包帯も痣もなかった。子供用のパジャマを着て恥ずかしそうに顔を出して将也に呼びかけた。
その姿を見て、将也は微笑んだ。泉は顔を出す七海を見て嬉しそうに微笑む。
「俊太郎と後のバカ二人は?」
将也は嬉しそうにそう聞く。すると泉は下を向いた。
将也は不思議そうな顔をする。
「まーくん。」
そこへケイコが後ろからそっと声をかける。振り向く将也。
「・・・。」
ケイコが目に涙を浮かべながら何か言いたげにしているが言葉が見つからない様子だ。その姿に将也はじっとケイコを見つめて待っている。
「・・・ダメだったのよ。」
ケイコは涙をこらえるように大きくため息をつくと、力なく言う。
「智兄ぃも・・・祐介も・・・・・・俊君も、下にいるわ。」
「・・・下って?下ってどこだよ?」
「・・・霊安室にいる。」
「は?」
ケイコは申し訳なさそうに下を向く。レイコも肩を落とし下を向き、七海も窓際の壁に背中を付け体育座りをしてうつ向いてしまう。泉も静かに涙を流した。
「ごめんね・・・私たち・・・守れなくてね・・・。」
ケイコは涙を流しながら震える声で将也に謝った。着ているシャツのお腹のほうで、両手をぐっと握り、シャツをしわくちゃにしていた。
将也はただその姿を見て唖然としている。瞬きも忘れケイコを見つめている。瞳からはいつの間にか涙が流れている。
「・・・・・・嘘だ・・・・・・。」
将也は小さくつぶやいた。それを聞いてケイコは膝から崩れ落ちる。
「・・・嘘だよな?」
将也は呆然と、淡々とそう言いながら涙を流す。
泉が将也の手を握ろうとした。すると将也はレイコを見る。ベットに座り静かに下を見ているレイコ。
「何が孤児院だよ・・・なぁ、なんとか言えよ。」
静かにレイコに向かってそういう将也。
「やめて。」
泉が小さな声で言いながら止めようと腕を掴む。しかし、将也は構わずレイコに詰め寄り胸ぐらを掴んだ。
「誰一人守れねぇじゃねぇか!!!」
顔を真っ赤にして、涙を流しながら顔を思いきり近づけて叫んだ。レイコはじっと将也の顔を見て何も言わない。
泉が必死になって将也の体を止める。
「お願い・・・やめて。」
そこへケイコも来て将也を後ろから抱きしめた。泉もケイコも泣いていた。
将也はもう力も入らず、素直にレイコから引きはがされると、上を向いて肩を震わせ、まるで子供のように泣いた。やがて膝から崩れ落ち、天に向かって大声を出して、涙をたくさん流しながら、ひたすら泣いた。
外には、雲一つない青空が広がっている。
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