青空で光る星 第二部~昼間の星


「ごめん!散らかってて!いつもはもっときれいにしてるんだけど。」

簾は焦りながら部屋に散乱した服やごみを片付ける。マットは面白そうにその姿を見ていた。

「望遠鏡?」

マットは部屋の棚の上を見る。そこには小さな望遠鏡や双眼鏡が並ぶ。おもちゃみたいな小さなものばかりだ。中には黄色いプラスチックのものまで。小学生向けの雑誌の付録についてきそうなものだ。

「ああ、うん。昔から星が好きでさ。だけど、こんな小さいのじゃ全然見えないんだよ。」

「へぇ、星か。オーストラリアは星もきれいだよ。」

「へぇ!見てみたいな。来て!」

そう言うと簾は手に持っている荷物を放り投げベランダへ通じる大きな窓を開ける。外に出るとそこには大型の望遠鏡がある。

「すごいな!」

ついてきたマットがそれを見て喜んだ。その顔を見て簾は嬉しそうだ。

「今は昼間だからこの望遠鏡じゃ大した星は見れないんだけど。見えるかな?」

そう言って簾は望遠鏡を覗いた。

「オーストラリアは南半球だから、日本とは見える星が逆になるんだよ。だから同じ空でも日本とは違う。全然違う星が見えるんだ。それに同じ星でも見え方が違う。あった!シリウス!覗いてみて!」

簾は望遠鏡から顔を外す。

マットが望遠鏡を覗き込む。

「本当だ!見える!」

「昼間でも1等星は見えるんだ。シリウスは太陽の次に明るい星だから、見つけるのは簡単なんだ。ほかにも・・・。」

マットが望遠鏡から顔を離す。簾は話に夢中になり他にも見える星を見つけてあげようと無意識に望遠鏡に顔を近づけていた。望遠鏡から顔を離したマットと簾の顔がすぐ目の前まで近づいていた。

2人の顔がすぐそばにあって、簾は顔を赤らめてマットを見つめる。マットも黙って簾の顔を見ていた。さすがにマットも少し気まずそうだ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

2人の間に沈黙が流れた。

 

その時、マットがニコッと笑う。

「好きなんだね。」

一言呟いた。

「・・・え?!あ!いや・・・その・・・。」

簾は顔を離し、明らかに戸惑っていた。頭をポリポリと搔きむしり、視線が定まらず動揺している。

「ご・・・ごめん・・・いや、嫌だよな、こんな奴。その・・・別に、嫌なら断ってくれれば・・・。」

ふと悲しそうな顔をする簾。

「嫌?楽しいよ。僕の周りに星に詳しい友達はいないから。昼間の星なんて初めて見たし。本当に星が好きなんだね。何かに夢中になる人はとても素敵だよ。」

そう言ってまた望遠鏡を覗くマット。

「・・・星?・・・ああ、星か・・・。なんだ。」

安心したようにつぶやく簾。同時に切なそうな顔をする。

 

「ねぇ、海に行かない?夜になったらまた星を見に来るよ。」

マットはさわやかな笑顔でそう言った。

 

 

『恋人なんてできないってどういう意味?』

 

『そのままだよ。俺は弱い人間だからな。それに恋愛には向いてない。』

 

『そんな風には見えないけどな。弱いって言ったら俺もそう。なんかうまくいってるんだかいってないんだかわからないことばっかりだよ。』

 

『簾は弱くなんかない。弱い人間は人に優しくなんかできないよ。』

 

『ありがとう。友君だって十分優しいよ。』

 

『そうかな。ありがと。』

 

『友君、最後に恋したのいつ?』

 

『全然ないよ。いつか忘れたくらい、ない。』

 

『どんな人が好きなの?』

 

『よくわからないな。そんなに恋愛経験ないし。タイプとかあんまり考えたことない。』

 

『なんか変わってるな(笑)』

 

『そうだろ(笑)俺、人付き合いが苦手なんだ。だから友達も少ない。』

 

『もしかして、人のこと避けてる?(笑)』

 

『避けてるのかな、そうかもしれない。』

 

『どうして?』

 

 

「ここ?いつものビーチじゃないの?」

マットが不思議そうに尋ねる。2人がやってきたのはビーチではなく、橋の上。古い橋で、4メートルくらい下には海が広がっている。橋の上から見るともっと高く見えた。手すりはあるが簡単に乗り越えられる。

「地元の子供たちはここで遊ぶんだ!見てて!」

そう言うと簾は服を脱ぎもせず、橋の上から飛び込んだ。

大きな波しぶきが上がる。

「簾!」

マットが心配そうに下を覗き込んだ。

「マットもおいでよ!」

満面の少年らしい笑みで下からマットを誘う。

「ここに飛び込めるようになると島の子供として一人前になるんだぞ!」

「そんなの嘘だ。」

「嘘じゃないって!気持ちいいぞ!ほら!勇気を出して!」

マットはゆっくりと足を乗せた。目を瞑り、鼻をつまんで不器用に飛び出した。

大きな水しぶきが上がり、マットは海に落ちる。

 

海面から顔を出すとマットは目を開けた。横には簾が嬉しそうな顔で立ち泳ぎをしている。

「あはははは!」

マットをみて笑う簾。

その顔を見てマットも笑い出す。肩の力が抜けたようだ。

「気持ちいだろ?」

「目を瞑ってた。今度は目を開けてやってみる!」

「おう!俺ももっかい!」

 

 

『人付き合いが苦手な方がいいこともあるんだ。』

 

『傷つかないとか?』

 

『まあ、そんなとこ。』

 

『そっか、なんかあったんだな(笑)』

 

『大したことじゃない。つまらない話だよ。』

 

『今度教えてよ。今度。俺は友君を傷つけたりしない。約束するよ!』

 

『ありがと。簾にはいい恋をしてほしい。マットとの恋愛、上手くいくといいな。』

 

『実は相談なんだ。告白しようと思ってる。』

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