青空で光る星 第二部~友達


中では耳が痛くなるほどの音量でビートの速い音楽がかかっている。多くの人が中で踊ったり酒を飲んだり。照明が眩しく照らし、端にはバーカウンター。中央には少し小さめのステージ。そこでDJが体を揺らしながらブースをいじっている。

 

簾はその光景に圧倒されてしまう。

「おまたせ!」

雄造が手にグラスを持って現れた。周りの音楽が大きすぎて大声でないと聞き取れない。

簾はグラスを受け取る。

「2丁目デビューに乾杯!」

雄造はそう言うと手に持ったグラスを簾のグラスにぶつけた。

「これ酒?!」

グラスに口をつける雄造。

「当たり前じゃん!」

「いや、俺酒はちょっと。」

「あれ、未成年じゃないよね?」

「そうだけど・・・。」

「じゃあ乾杯!」

もう一度グラスをぶつけると飲みながら音楽に合わせて体を揺らす雄造。甲高い声を出して簾を誘う。

そして簾を店の奥へといざなう。簾はどんどん広がる自分の視界に入ってくる、見たこともない東京の光景に、次第に目を輝かせていく。そして、雄造が向かった店の中央へと足を運ぶ。手に持ったグラスに口をつけながら。

 

ステージの前まで来ると雄造が小さく体を揺らしながら簾の手を握った。

「何もかも忘れて踊るんだ。ほら!」

「でも俺踊りなんか・・・。」

「いいんだよ。簾のまま好きに踊ればいい。誰も気にしてない。ここでは自分が主役なんだ。なにも気にしなくていい。周りの目なんか気にするな。」

簾はその言葉を聞いて、グラスの中の酒を一気に飲んだ。そして目を瞑り体を揺らし始める。

音楽が心地よくなっていく。簾には周りの人だかりがまるで見えていないかのように、何も考えず、ただ流れるリズムに身を任せた。時には雄造と笑い合い、夢中になって踊る。

 

その時、急に音楽の調子が変わる。静かな音が流れ始め、同時に照明が暗くなった。同時にどっと歓声が上がる。多くの人がステージに集まってきた。簾はその光景に驚く。ステージのすぐ横にいた簾の周りに、急に人が集まってきた。

簾は勢いでステージの目の前まで追いやられる。

「雄造!」

「これからショーが始まるんだ。これを見に来たんだよ。イケメンが見れるぞ!」

するとステージ中央に照明が集まる。そして、音楽が流れ始める。リズムのある派手な曲だ。さらに歓声が大きくなる。

イントロと同時にステージ中央から男たちが数人、ゆっくりとせり上がってきた。忍者のような形の派手な生地で作られた衣装を着た5人組だ。顔は隠れてしまっている。彼らは音楽に合わせて体を揺らし、やがて派手なダンスに変わる。

 

簾の隣で雄造は奇声を上げて楽しんでいる。簾はというと。

 

 

『つながりか。そうだね。友君とはなんか特別なんだ。そんな大したこと話してないけど、初めてできたゲイの友達だし。』

 

『特別か。嬉しいよ。』

 

『あの後、フラワーって言うクラブに行ったんだ。ていうか連れていかれたんだけど。』

 

『ああ、有名だよ。流行ってる。』

 

『うん、流行ってた。』

 

『ダンスチームを持ってて、ショーが人気なんだ。アイドルみたいな感じ。』

 

『ああ、だからステージショーやってたんだ。めちゃくちゃかっこよかった。なんか一番人気のダンサーがいるって。今日はいなかったみたい。外で今日のステージは外れだったって言ってる人がいた。』

 

『外れだったの?』

 

『俺はそうは思わなかったよ。なんか都会って感じがして。ああいうの憧れる。ダンサーは確かにイケメンだったけど、なんだかみんなチャラそうだった(笑)一番人気の人はもっとイケメンらしいよ。』

 

『そうかな。俺はそうは思わないよ。』

 

『見たことあるんだ。』

 

『まあね。』

 

『一番人気の人、名前なんて言ったっけな?よく覚えてないな。』

 

『俺はあんまり好きになれない。』

 

『そうなんだ。なんか友君て謎が多いよね。』

 

『そうかな。隠してるつもりはないんだけど。』

 

『わかってるよ(笑)だけど、なんだか寂しそうだ。』

 

 

ステージの男たちが仮面を取ると、同時に上半身の衣装も剝がれる。鍛え上げられた肉体が汗をかいてセクシーに見える。

あちこちからダンサーの名前らしき歓声が飛んだ。顔だちもいい。

簾はすっかり見とれてしまった。

「東京って・・・すげぇや。」

小さくつぶやく簾。

 

 

「いろいろありがとう。空港まで送ってもらって。」

「いやいや、本当は家に泊めたかったけどなぁ。」

空港で荷物を持った簾と、隣にいるのは雄造だ。

「そればっか。ほんとやることしか考えてねーな。」

「あははは!簾には敵わないな。会社合格したらまた来るんだろ?」

「うん、でもいくつか受けてるから、まだわからないけどね。でも東京にはまた遊びに来るよ。」

「おう!メールしてる友達と会えなかったのは残念だな。」

「うん、仕方ないよ。でもなんか、避けられてるのかなって思っちゃった。」

「友達なんだろ?今度東京に来たら会えばいいよ。それまで続いてたらな。」

「すぐそういうこと言う。」

「俺には無理だね。メールで友達なんて。」

「雄造はエロいことしか考えてないからだろ?」

「あほか!エロがあってこそ男に生まれた意味があるってもんだ。童貞君にはわからねーな。」

「うっせー!」

「あははは!じゃあ、気をつけて帰れよな。」

「うん!またね!」

「帰ったら祭りだな!告白頑張れ!」

「ありがと!」

そう言うと、簾は手荷物検査の奥へと消えていった。

 

 

『あのさ、メル友って本当に友達なのって聞かれたじゃん。俺、なんか思ったんだけど、友君は寂しそうだけど、めちゃくちゃ優しい。そういう人って痛みが分かる人だと思うんだ。それってすごいことだ。だから友君には魅力があるんだよ。友君はモテないって言うけど、嘘だね。すごくいい人だと思う。俺は友君が好きだよ。だから俺は友君のこと友達だと思ってる。そう思いたい。友達でいたい。』

 

『俺もだ。』

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