青空で光る星~一つだけ現れた雲


「立て!俺と勝負しろ!」

俊太郎はずっと一人で怒鳴っている。男は訳がわからず俊太郎をじっと見ている。見上げるようなその目は、眩しさでうっすらと閉じられていた。

「はっ、喧嘩なら買ってやる。」

男はそう言うと立ち上がった。俊太郎とは違い冷めた感じだ。

 

「俺が勝ったらもう死ぬな!」

 

俊太郎はさっきと変わらない真剣な顔でそう言った。

「・・・え?」

男はその言葉に表情を変える。

「何があっても死ぬな!約束しろ!」

男はまっすぐに俊太郎を見つめたまま動かない。

「死ぬつもりだったんだろ?」

男は俊太郎から視線を逸らし少し下を向く。

「別に・・・死のうとなんか。」

「してただろ?!」

俊太郎は男の言葉を遮る。

「俺はお前を許さないからな!」

男は再び俊太郎を見た。すると俊太郎は男のそばまで近づいてきた。そして男の胸ぐらをつかんで、顔をめいっぱい近づけて言う。

 

「今日から俺が味方だ!何かあっても守ってやる!話も聞いてやる!お前を馬鹿にしたりしない!だからもう死ぬ必要なんかない!もしおまえが死んだら、俺はお前を許さない!」

 

男の瞳は、少しずつ濡れて行く。俊太郎を真っ直ぐ見つめるその瞳は、涙で溢れて行く。歯を食いしばり、唇を少しだけ震わせながら眉間にしわを寄せ、声にならない言葉を漏らして、俊太郎の胸で泣き出してしまった。

俊太郎は思い切り男を抱きしめる。

 

 

「名前の漢字も、教えてくれよ。」

 

少し風が出てきた。さっきまで雲なんか一つもなかったのに、一つだけ、小さな雲が現れた。どこから来たのか。ゆっくりと青い空を漂っている。

 

「将軍の将に弓矢の矢で将矢だ。津々見将矢。」

「喧嘩は俺の勝ちだからな!」

「喧嘩にならなかっただろ。」

「あははははは!ああ、ならなかったな。」

「・・・お前、誰だ?」

「俺は遠田俊太郎だ!」

「違うよ。どこのクラスだ?」

「隣のクラスだ。昨日転校してきた!」

「ああ、だから見たことないのか。」

「お前、いじめられてるんだってな?」

「ああ、お前も俺なんかと一緒にいるといじめにあうぞ。」

 

将矢は体を起こす。

 

「だから俺はお前と友達になれないのか?俺の友達は俺が決める!」

 

俊太郎も体を起こした。隣の将矢を見て意地になる。

 

「いちいち大声出すなよ。」

将矢は鬱陶しそうに言う。

「何でいじめられてるんだ!」

「はぁ・・・。」

声のボリュームが変わらない俊太郎に呆れる将矢。頭を掻く。

 

「俺は孤児だ。」

「コジって何だ?」

「はぁ?そっから説明すんのかよ?」

 

学校の屋上。将也はため息をつきながら立ち上がった。すると、同時に学校のベルが響いた。

 

 

周りは田んぼだらけだ。

 

  俺の親は死んだんだ。2人とも。そう言うのを孤児って言うんだよ。

 

  んで、預けられた施設がこの街にある孤児院。

 

  居酒屋やってて、その金で俺達は暮らしてる。

 

  だけど、俺を預かってくれた奴が、そこの店の経営者で・・・その・・・オカマだ。

 

少し歩くと、建物が見えてくる。コンビニもあって、ドラッグストアもある。スーパーもドラッグストアの隣にある。広い駐車場に大きな看板。しかし、大きな建物と言えばそれくらいで、後は小さな商店やラーメン屋、年寄りが買うような服屋。

 

  要は・・・ゲイって知ってるか?男で、好きになる相手も男なんだよ。

 

  男同士のカップルがやってる居酒屋なんだ。見た目オッサンだけどな、しゃべり方は女だ。

 

  だから、学校じゃみんな気味悪がっていじめられてる。

 

二人は学校を後にし、田んぼと小さな町を歩いて帰る。コンビニによって、ジュースを飲む。俊太郎は将矢に質問攻めだ。前も見ずに将矢の周りをぐるぐる回ったり、将矢の前を後ろ向きに歩いたり、危なっかしい。将矢は特に注意することもなく、淡々と話す。

 

  俺は引っ越してきたばっかりだ!
  書き方はわからないけどな、
  あれだ!俊て言う字に太郎って書くんだ!
  俺はいじめられたって平気だぞ!強いから!
  喧嘩はしないけどな、でも強いぞ!後は何が聞きたい?

 

「お前馬鹿だろ?」

将矢の周りを嬉しそうに駆け回りながら、自分のことはそれしか話せない俊太郎をみて呆れる将矢。そう言うとすたすたと行ってしまう。

「あははははは!よく言われる!後はな、空が好きだ!ずーっと眺めてられる。さっきだって空を見に行ったんだ。そしたら将矢に会った。」

「空?空なんか眺めに来たのかよ。」

 

 

陽が随分傾いてきた。まだ空は明るいが、影が少しずつ長くなっていく。2人は広い公園に来ていた。誰もいないのにただただ広いその公園の端にあるブランコに座っていた。

 

「その居酒屋には他に子どもがいるのか?」

「ああ。」

「なんだ!兄弟がいるのか!」

「まあな。兄弟みたいなもんなんだろうな。」

「良かったな!一人ぼっちじゃないじゃんか!」

将矢は何も答えない。

 

「連れってくれよ!」

「は?」

「今からだ!今日行きたい!」

「いや、どこに?」

「おーまーえーんち!」

将矢は俊太郎の顔を見て唖然としている。

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