青空で光る星~眩しい空


「智兄ぃってさ・・・恋人いるの?」

良く晴れた空はいつもと変わらない。グラウンドでは多くの生徒が遊ぶ中、将矢と俊太郎は相変わらず屋上にいた。

俊太郎は屋上に寝そべり空を見上げている。眩しそうに目を細めている。昨日の怪我がまだ痛々しく残っている。将矢はグラウンドを眺めていた。

唐突の俊太郎の質問に将矢は振り返り俊太郎を見る。

「え?恋人?」

「そ!恋人!いるの?」

「いやぁ・・・聞いたことないけど・・・。」

「じゃあさ!今度聞いてみてよ!」

俊太郎は体を起こした。

「お前・・・もしかして・・・。」

「智兄ぃってさ、かっこいいよな。」

いつもにも増して嬉しそうな俊太郎。

「好きなのか?あいつのこと?!」

将矢は思わず声が大きくなる。

「うん・・・好きかも。」

俊太郎は急に照れ始めた。

「男だぞ!」

「うん!」

「お前ホモなのか?」

「いやぁ、わかんない。あははは。」

呑気に笑っている俊太郎。

「気持ち悪ぃ・・・。」

「・・・。」

将矢はぼそっとそう言うと再び背を向けグラウンドの方を見る。その言葉を聞いて俊太郎の表情から笑顔が消えた。

「男が好きなんてやめろよ。」

将矢はいつも通りの口調で言う。

「そもそもあいつのどこがいいんだ。お前はあいつのがさつさを知らない・・・。」

将矢はグラウンドを見降ろしたまま話し始めた。

「俺は気持ち悪いか?」

将矢の話を遮る俊太郎の言葉。

将矢が振り返ると、さっきまで寝ていた俊太郎は立ち上がり将矢の後ろに立っていた。いつもみたいに笑ってもいなければ、声もでかくない。

「俺は友達だろ?」

「どうしたんだよ?」

将矢は苦笑いしながら戸惑っている。

「俺はお前がどんなふうになろうと気持ち悪いなんて思わない。お前は俺が気持ち悪いのか?」

真っ直ぐ将矢を見つめ真剣な顔でそう言う俊太郎をしばらく無言で見つめる将矢。

「俺は友達にそんなこと言われて傷ついたぞ。お前にだけはそんなこと言われたくなかった。」

そう言うと、俊太郎は背中を向けて行ってしまった。将矢はその姿をずっと見つめていた。

 

 

「なぁなぁ、智兄ぃはさ男もイケるんだろ?」

「バカ!俺は女が好きに決まってんだろ!」

居間のテーブルで智博の隣に座る俊太郎は今までよりも体を近づけぐいぐい智博に言いよっていた。

「俺と付き合ってよー。」

「何だよ、急に。止めろ!離れろ!」

智博はろくに食事もできない様子だ。

「あんた素質あったのねー。やっぱりそうだと思ったわ!」

レイコはその様子を面白がっている。泉も七海もケイコも裕介もその様子にはあまり興味ないようだ。

しかし、その姿を恨めしそうに見ている将矢。

「お前は何でそんな目で俺を見てるんだよ!」

智博は将矢に向かって怒鳴る。恨めしそうなその顔が気になるようだ。

「見てねーよ!」

不機嫌にそう言うと将矢は目の前の料理を口いっぱいに入れ始めた。

「焼餅やいてんのよね?」

ケイコがぼそっと言う。

「やきもちって何?」

七海が将矢に尋ねた。

「うるせぇ!あっち行けクソガキ!」

将矢は七海に怒鳴る。

「おい!お前なんだその言い方!」

すかさず智博が将也を叱りつけた。

「うるせぇ!さっきからデレデレしやがって!やっぱりお前ら気持ち悪ぃんだよ!」

将矢は手に持った食器を置いて立ち上がり怒鳴る。

「おい!また言ったな!」

俊太郎も立ち上がる。

「俺のどこが気持ち悪ぃんだよ!それに、俺はデレデレなんかしてない!」

智博も立ち上がり怒鳴り始める。

「3人とも下で食べましょ。」

ケイコは冷静にお皿を持つと七海、泉、裕介を連れて店に降りた。

「あははは!ほどほどにしなさいよぉ!」

レイコも笑いながら下へ向かう。

 

「痛ってーな!やりすぎだろ!ボクサーなんだから手加減しろよ!」

「うるせぇ!謝れ!」

「誰が謝るか!くそ兄貴!」

「こんなときだけ兄貴とか呼んでんじゃねーよ!」

「智兄ぃ!それ俺の足!痛い痛い!」

「お前も喰らえ!」

店から聞こえてくる怒鳴り声と痛がる声。

 

 

店も、居間もすっかり静まり返っている。窓の淵に俊太郎と将矢と智博が座る。外の格子に足を掛け、智博はビール、2人はアイスを食べていた。俊太郎を真ん中にして3人とも空を見上げていた。

「俺、喧嘩なんか初めてだ。」

俊太郎はどこか嬉しそうだ。その言葉に智博はほほ笑む。将矢は不思議そうに俊太郎を見た。

「何で喜んでんだよ。」

将矢は俊太郎の言葉の意味が理解できないようだ。

「お前はまだ子供だな。」

智博の言葉に機嫌が悪そうな顔をする将矢。

「俺の家には喧嘩できる相手がいないってことだよ。」

俊太郎が説明する。

「だから、それの何が嬉しいんだよ?」

「あはははは!」

智博は笑う。

「俺はこの家が好きだ。」

俊太郎のその言葉に何も返さない2人。

「俺の家は父親しかいないんだ。父親と2人暮らし。いつも仕事でいないから、俺は家で一人だし。こんな賑やかな家庭でもないし、兄弟もいないし。」

「・・・その傷、父親にやられたのか?」

将矢は少し遠慮気味に尋ねた。

「え?ああ・・・わかってたか。」

俊太郎は笑って見せる。

「俺ドジだからな、いっつも叱られんの。」

不自然に笑う俊太郎に、2人は返す言葉が見つからない。

「家に来いよ、好きなだけ。」

智博が優しく言う。

「・・・やっぱりかっこいい。」

俊太郎の反応に智博は大きくため息をつく。

「あはははは!」

将矢はその光景を見て嬉しそうに笑った。その笑い声につられ、2人も笑う。

 

 

「俊君。」

後ろからケイコが声を掛けてきた。振り向くと深刻そうな顔をしている。

「お父さんが来てるわよ。」

3人の顔から笑顔が消えた。

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