ライバル


俺は先輩と少しだけ話し、二人別々に帰った。

 

なんだかすごく落ち着いた。

先輩の呑気でマイペースで、だけど俺のことをどこか優しく包んでくれるようなあの表情に少し安心感を覚えた。

なんなんだろう、この気持ちは。先輩と居るとすごく楽になる。まるで兄ちゃんみたいだ。俺も兄弟が欲しかった。まあ、同じような顔した兄弟みたいな親友がいるけど、今はぎくしゃくしてる。

「思春期かな・・・。」

俺はそんな独り言をつぶやきながら帰る。

 

 

体育館の施設の入り口にさしかかると、5、6人でたむろしている生徒たちが目に入る。黒い生地に紫色のライン。葉野大学付属高校の生徒だ。

俺は隆史の話を思い出す。

 

向こうは俺の方をちらっと見た。俺はすぐに目を逸らす。

俺と目があったのはショートヘアの男だ。前髪が目のすぐ上まであり、横に流れている。色が浅黒く、シャープなあごのラインに少し細そうな体つき。だけど腕はしっかりと張っていて、胸もジャージを押し上げている。俺みたいな坊主とは真逆の、なんだか都会の学校の生徒って感じだ。隆史の話からすると、もっとヤンキーみたいな見た目を想像してたけど、普通の男子って感じだった。

だけどその周りいる連中はすごく見た目が怖い。目があった生徒よりも体が大きくて、ピアスなんかも付けてたりして、なんか近づきにくいオーラだった。

 

俺は鋭く睨まれている視線を感じながらも、目を合わせずに通り過ぎようとした。

「大輝君。」

「?!」

俺は驚きを隠せなかった。さっき目があったそいつが今俺の名前を間違いなく呼んだからだ。

俺は目をまん丸くして振り向く。その集団の中では一番背が低いが、多分俺と同じくらい。なんだかリーダーっぽく真ん中にいる。ポケットに手を入れて俺の方をニヤニヤしながら見ていた。あらためて正面から見ると、結構イケメンだ。顔のバランスが良くて、岡井先輩と同じように女子にモテるタイプだろう。髪型は孝明に似てるけど、顔が違うとこうも都会っぽく見えるものなのか。どっかの雑誌に載ってそうな整った顔を見て、ちょっと羨ましいと思ってしまった。スポーツも勉強もできそうなタイプ。しかも家は金持ちそう。こういうのは苦手だ。

「大輝君だよね?」

「あ・・・うん。」

何年かもわからないのに俺はタメ口で返事をしてしまったことに気が付く。

「あ・・・なんで・・・俺の名前知ってるんですか?」

俺はたどたどしくなってしまった。めちゃくちゃダサい。

「敬語なんか使わないでよ。俺も同じ1年だし。急にびっくりしたよね。」

そいつは俺の前までやってくる。大抵スポーツ万能そうな男子って感じ悪いけど、そいつの印象はなんだか良かった。聞いてた噂と少し違うと思った。

「僕たちの学校は相手の選手のことはあらかじめ調べておくんだ。だから君のことも知ってる。」

「え?ああ、そうなんだ。」

印象が良くてもなんだか俺の苦手なタイプそうに見えてることには違いなかった。俺は適当に返事を返してその場を去ろうと思った。

「あのさ、大輝君にお願いがあって。」

予想外の言葉だ。

「お願い?」

「そう。君にしかできないんだ。」

「え・・・まあ出来ることならいいけど、何?」

俺は警戒していた。多分感じ悪かったと思う。

 

「僕と付き合ってよ。」

 

「?」

顔を傾ける。よくわからないことを言う。

「付き合うって、別にいいけど。どこに行くの?」

そう尋ねると相手はにこっと笑う。

「やっぱり大輝君はかわいいね。俺のタイプだよ。」

だんだん訳が分からなくなってきた。最初からわけがわからないけどますますわからない。

「いや・・・あの・・・タ・・・タイプ?」

「うん。僕と恋人としてつき合って欲しいんだ。」

「・・・。」

俺は相手の顔を見て言葉が出なくなってしまった。頭が真っ白になる。

「ごめんね。急に。驚いただろ?僕のことはこれから知って行ってくれればいいから。ゆっくりとね。僕の全部を。」

そう言いながら相手が顔を近づけてきた。俺は反射的に相手の肩を手で押さえて近づかないようにする。

「ちょっと待って!・・え?・・・いや、全部って・・・あの・・・。」

相手はそれ以上無理に近づこうとはしない。

「もし俺と付き合うのが無理ならさ、もう一つお願いしてもいい?」

相手は余裕のある表情でそう言った。

「もう一つ?」

俺は完全に動揺していた。

「俺とさ、男闘で勝負しようぜ?」

相手の声のトーンが急に変わる。

 

「は?」

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