先輩と過ごす時間


医務室の中で声を聞いた瞬間、奥のカーテンの向こうで何をしているのかはすぐに分かった。一成先輩と言い、剛も。まあ、剛が先輩を好きだってことは未だに信じてないけれど、こんなに男が男を好きになるもんなんだと知って、そしてカーテンの向こうから聞こえる喘ぎ声と息遣い。

『誰かヤッてるんだ・・・。』

俺は嫌なタイミングに来てしまったと思った。すぐにでも出て行こうかと思ったけど、なぜか外に出て行けなかった。自分は童偵で、もちろん他人のセックスなんて見たこともない。女の裸を見たことすらない。この経験の浅さが俺をカーテンの向こうへと惹きつけた。

俺はそっと音を立てずに一番奥のカーテンを覗く。さっきちらっと見た時は誰も寝ていなかったが、良く見るとベットの脇でやっているみたいだ。下半身裸の足が見えた。

「はぁはぁ・・・せ・・・先生っ・・・まずいっすよ。」

どうやら先生と生徒みたいだ。俺は唾を呑む。

 

子ども同士のセックスじゃなくて、大人のセックスなんだ・・・。

 

「ずっと欲しかっただろ?なぁ、岡井、お前の声聞いて勃起したんだぜ?見てただろ?」

どこかで聞いたことのある声だった。責められる方も責める方も。

『岡井?岡井先輩?』

「俺のチンポとどっちが好きなんだよ?言ってみろ?ほら言えよ。」

囁くようなその声。

 

だんだんと2人の姿が見えてくる。

下半身は裸で、でも上半身は見覚えのあるシャツを着ている。そして俺は2人の顔を見た。

 

 

その顔と一瞬目が合う。一秒くらいだったと思う。お互いに顔を認識するには十分だった。

 

 

俺はその瞬間顔を引っ込めた。先生が生徒の後ろから抱きついていた。下半身は裸で先生の股間と生徒の尻が密着していた。さっきの一成先輩の試合を見て、何をしているのかは想像が付いた。

 

運良く先生には顔を見られていない。でも、生徒の方とは目があった。俺はもうその場には居られずに、音をたてないように急いでドアに向かう。

「痛っ!」

勢いのせいでおでこが扉にぶつかり、大きな音がした。声を出してしまう。

同時にカーテンの向こうでがさがさと音がした。もう完全にばれているが今さら引き返せず、俺は乱暴に扉を開けると出て行った。

 

 

俺は放心状態で廊下を歩く。外は清々しく晴れているが、俺の心はどんよりと曇っている感じ。

「おい!」

後ろから俺は急に背中を叩かれる。

「うわ!」

俺は馬鹿みたいに声を出してしまう。振り向くと一成先輩だ。

「先輩!」

先輩は俺の気も知らず、ニコニコとして嬉しそうだ。

「一人か?」

「え?ああ、そうですけど、怪我は?」

「いや、あんな不意打ち喰らって気失うようじゃまだまだ駄目だな。でも約束したからな!ちゃんと勝ったぞ!」

「約束?」

「お前のために頑張るって言っただろ!」

「あ・・・はい。」

約束って言われると俺はピンと来ず、そんな気のない返事を返してしまう。

「なんだよ、嬉しくないのか?」

先輩は少し不貞腐れたような顔で歩きだした。前に行くと振り返り、俺の顔を見ながら後ろ歩きで進み、にこっとほほ笑んだ。

『か、かわいい・・・。』

その顔にじゃない。多分、顔にもだけど、なんだか俺の前でだけ見せるその子供みたいなところが、いつもの頼れる先輩とは違って新鮮だったんだと思う。俺は思わず顔が赤らむ。

 

 

次は國保先輩の試合だったが、もう少し時間があった。一成先輩が俺と二人きりで散歩したいとか言うから、俺達は外に来ていた。丁度近くに公園があり、俺と先輩はブランコに乗っていた。

「なあ、どうした?なんかあったんだろ?」

俺は相変わらず放心状態だった。あまりうまく先輩と話せずにいた。

「いや、なんかあったって言うか・・・色々ありすぎですよ、この部活。」

「あはははは!」

先輩は空を向いて笑う。

「ああ、そうだな。俺も初めはそう思ったよ。やっと慣れたと思ったら衝撃的過ぎることが起こるんだよな。」

「そう!それ!マジでついて行けないっす・・・。」

「話してみろよ、何を見てどう思ったか。」

先輩はなんだか改まって、俺の横顔をじっと見ながら尋ねてきた。

「はぁ・・・何から話せばいいか・・・。」

俺は先輩の顔を見る。

「かわいい・・・。」

俺は何の気なしに振り向いただけなのに、先輩はそう呟く。

「いやいやいや、そういうのマジで!かわいくないっすから。」

俺はすぐに顔を逸らした。本当にこういう時どうしていいのかわからない。

「ごめんごめん!ちゃんと聞くよ!」

先輩は楽しそうだ。

なんだか俺がこんなに悩んでいるのに、だんだん腹が立ってきた。

「だいたい!先輩があんな奴と・・・。」

「俺!?」

「そうですよ!あんな奴と、あんなのほとんどセックスみたいじゃないですか!て言うか、しゃぶられたり、あいつの穴に挿したり!そんなこと教わってないし、知らない奴とのセックスを他の生徒にも見られたんすよ!」

そう言いながら先輩の方を向くと、なんだか先輩はにやにやと笑っていた。俺の予想とは違うその表情に、俺はまた言葉を詰まらせる。

「な・・・何で笑ってんすか?」

「嫉妬してんのか?」

「え?」

そう来たか・・・。

「いやいやいや、あはははは!もう!それはないっす!」

俺は思わず笑う。

「それはないない。いやいや、ないわ。シットって・・・。シット?」

俺の表情から笑顔が消える。

「シット・・・なんですかね?」

「ああ、そうじゃね。」

「これが・・・嫉妬・・・。」

「大輝?」

先輩が俺の名前を呼ぶ。振り向くとさっきと同じ優しい微笑み。

「嬉しいよ。」

「・・・。」

俺はそれ以上何も言い返せなかった。

 

 

先輩が半ば強引に犯されて、犯した相手の学校はとんでもない学校で、剛が俺のこと嫌いで、さらに先輩のことが好きで、その先輩は俺のことが好きで、さらに医務室であんな場面に遭遇して。

今日は散々だった。

 

だけど、先輩の嬉しそうな顔を見ると、なんだか元気になった。先輩とこうやって過ごす時間も、なんだか悪くない。

 

 

そのままその日が終わればよかったのに。悪いことは続く。俺がついに事件を起こしてしまう。

続きを読む

シーズン2目次一覧へ戻る

男闘部TOPへ戻る

2 thoughts on “先輩と過ごす時間”

  1. はじめまして。
    男闘部、つい最初から最新まで一気に読んでしまったくらい個人的にすごく好きな設定です(特にガタイ系で六尺褌締めるところ)。
    自分もガタイ専なので、読んでるうちに登場人物(国保主将、一成先輩、剛、大輝)の身長体重はどのくらいなんだろうとすごい気になっていますので、教えてもらいたいです(汗)
    そして早く続きが読みたいですし、今後の展開がどうなるか非常に楽しみにしております(笑)

    1. けんとさん

      コメントありがとうございます。
      ガタイ系いいですよね。。。あぁ、私もそんな男の中の男になりたいっすw

      身長、体重はですね、、、実は設定にはなくて、、、今度イラストでも誰かにお願いしましょうかね、、、。
      色々考えておきます、、、。

      やっと執筆が終わってシーズン2もあともう少しです!ぜひ楽しんでくださいね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。