親友と恋


一成先輩は医務室で休んでいる。他の先輩たちの試合もあったけど俺は心配で、医務室の前で待っていた。だけど、あまり大勢いると迷惑になるって、先生に昼を取ってくるように言われた。1年は全員、お小遣いで昼食を取った。

 

 

「何年か前に俺が中学のサッカー部だった頃、一度試合でぶつかったんだ!勝つためなら何でもするって噂の学校だよ。」

俺は隆史と昼食を取った。剛と孝明はどうしてるだろう。春樹はもちろん一人で食べていると思う。医務室にも来なかったし。

「何でもって?」

俺達は安そうな古臭いうどん屋で食事をとる。カレーうどんをすすりながら隆史が教えてくれた。

「確か野球で一度対戦相手のエース選手を帰り道で集団暴行して何人か逮捕されたり、ボクシングとか水球とか、試合中に凶器使ったり。ドーピングしてるとか試合でミスった生徒は酷いいじめに合うとか。悪いうわさの多い学校だよ。」

「なんだよ、それ。」

「とにかく関わらない方がいいぜ。」

「でも、それなら優勝とかしてんだろ?」

「まあな。スポーツの成績だけはいいって聞くけど。それで進学してる生徒もいっぱいいるって。俺も行こうとしてたんだけどそんな噂聞いたらな。」

「へぇー。」

俺はさっき見た相手の顧問らしい男の悪そうな顔が頭に浮かんだ。

「それよりさ、お前剛とどうしたん?」

「へ?」

うどんを食うことも忘れ、ぼーっとしていた俺に隆史が尋ねる。

「どうって?」

「仲悪くなっただろ?」

ストレートな質問に俺は言葉が返せなかった。

「え?・・・いや、悪いって言うか・・・。」

薄々は俺もそう感じていた。でも周りから見てもそうなら、もう剛の態度が冷たくなったことが確信に変わってしまった。それなりにショックだった。まあ、前から気が付いていたから大きく落ち込みはしないが、やっぱり気になる。

「何かあったのか?」

隆史もさすがに心配そうだった。

「いや・・・・・・お前、絶対言わないか?」

 

 

俺は隆史に全部打ち明けた。

剛が冷たくなったのは俺のせいじゃなくて、合宿での一成先輩のセンスのないチーム分けのせいで、俺は嫌いにもなってないし、変わらず親友だと思ってるってことも。

「だったら一成先輩に教えてやればいいじゃん!剛が先輩のこと好きですって!」

隆史はいとも簡単に言う。

「違うって、剛は先輩に憧れてるだけ。そんなのとっくに話したよ。」

「はぁ、お前馬鹿だな。」

隆史は溜め息をつく。

「剛は一成先輩のこと好きなんだよ!」

「え?いやいやいや。そんなわけないだろ!さすがに!剛が言ってたのか?」

「言わなくたって見てればわかるだろ。」

「え?嘘だろ?」

「もしかするとすでに、あの2人付き合ってるぜ?」

「・・・いや、それがさ・・・。」

「ん?」

 

色々ショックだった。剛が冷たくなったことを認めるのもショックだったけど、それよりも剛が先輩を好きだなんて。というか、そんなの信じられるわけない。剛が男を好きになるなんて。男だし。男が男を?でも、男を好きになった人を一人知っている。

 

俺の頭の中はパニックだったが、俺よりも混乱してるやつが目の前にいた。

 

「告白?!」

「声がでぇよ!」

隆史と俺はすでにうどん屋を出て体育館に戻ってきていた。周りには生徒たちがたくさんいるのに、隆史はでかい声で叫ぶ。俺が注意すると、手で口を押さえた。

「お前、絶対言うなよ!」

「おい、お前剛に殺されるぞ!」

隆史は小声でささやく。

「分かってるよ!だから困ってんだろ!」

俺も小声になる。

「じゃあ付き合ってんの?恋愛禁止じゃん。」

隆史はどこか面白そうだ。

「付き合うわけないだろー。どうしていいかわからないし、付き合うとか好きとか良くわかんねぇし。」

「お前ってホントに子どもだな。」

こいつまで俺を子ども扱いし始めた。

 

 

隆史は大人に見えた。剛の先輩への気持ちも気が付いてたし、俺と剛の仲にも気が付いていて。それに何より男が男に告白するなんて知ったら普通どんな顔するかわからないのに、そこには特に突っ込まずに、告白されたことに驚いていた。俺は男同士の恋愛ってだけでこんなにおどおどしてるのに。

誰にも言うなって言ったら、あんな怖い先輩の話、誰に言えるんだって言い返された。

 

俺はなんだかホッとしていた。先輩には悪いけど、俺一人で抱えるには荷が重すぎた。誰か話せる相手がいるのはいい。隆史が知ってることはまだ先輩には内緒にしておこう。

 

 

その後、しばらく試合はない。俺達は控室に戻った。

「俺ちょっと試合の結果聞いてくるわ。」

控室には先輩たちがいて、これから昼に出ようとしていた。隆史は近くにいた孝明と剛の所へ行き、試合の結果を尋ねていた。

俺は、やっぱり一成先輩のことが気になり、医務室へ行くことにした。

 

「失礼しまーす。」

俺は小声でそう言うと静かに扉を開けて中へ入る。勝手に入っていいか迷ったが、さっきと違って誰もいないし、中に人影も見えないから良いだろうと思い入った。

医務室の中は静かで、カーテンで仕切られたベットと端には診察台や医療道具などが置いてあった。学校保健室と変わらない。俺はカーテンの間を覗くように中を見た。しかし、どこにも人影はいない。

もう目が覚めて戻ったのかもしれない。そう思い、控室へ引き返そうかと思ったその時だった。

「ぅぁあっ!」

それはどこかで聞いた覚えのある低い声。そして、荒い息遣いがどこかから聞こえてきたのだった。

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