「そんなに緊張するな。」
國保先輩はなんだかいつもと違った。いつもは無表情で、威厳があって、話しかけづらくて。だけど今日はなんだか、まるで普通の高校生みたいで、先輩っぽくないって言うかいつも張っている気合みたいなのがなかった。
「俺も座っていいか?」
気迫みたいなのはなかったけど、体は重量級のボディビルダーみたいな体格で制服はパツパツだった。
「あ・・・はい。どうぞ。」
先輩は俺の傍まで来るとブランコに座った。先輩がブランコに座るなんて、その姿だけでも俺にとってはかなりレアで、少しの間その姿を見つめてしまった。
「お前も座れよ。」
「あ・・・はい。」
やっぱりこの人の前では緊張する。
「部活、辞めたのか?」
先輩は優しい口調で俺にそう尋ねた。
「・・・。」
俺は何て言っていいかわからずに、黙ってしまう。
「一成から聞いたよ。」
きっと、昨日の話だ。
「俺は・・・。」
俺は沈んだ顔で話し始めた。
「俺は、駄目なやつです。なんか男闘にも付いていけないし、他の1年みたいに割り切れないし、あまりにいろんなことが起こって、もうどうしていいかわからなくなって行って。」
「ああ、俺にも責任あるよな。」
「え?」
「あんなところ見られちまった。」
「あぁ・・・いや、それは・・・。」
「安心しろ。お前を見たことは誰にも言ってない。田路先生も知らない。」
「あ・・・はい。」
「かっこ悪いよな。主将の俺が、10個も上のおっさんに夢中になっちまって。分かってんのにな、遊びだって。」
意外な事実だ。
「遊び・・・なんすか?」
「あはは、ああ、そうに決まってんだろ。田路先生、結婚してんだぜ。」
「えぇ?!」
まさかの不倫とは・・・。
「あの時、中途半端に終わったから、俺のせいで団体戦負けちまった。」
「え?負けたんですか?」
「ああ。他の奴らには悪いことしたよ。」
先輩はなんだか清々しく見える。
「俺もさ、いつも逃げ出したくて堪らなかった。」
「え?先輩が?そんな風には。」
「見えないだろ?見せないようにしてる。好きな人ができると、尚更逃げ出したくなる。」
先輩は優しい笑顔を俺に見せる。笑った顔なんて初めて見た。
「俺はお前が羨ましいよ。」
「俺が?」
「ああ。俺も一成みたいなやつに好きになれば良かった。」
その言葉が、俺の胸に刺さる。
「多分あいつがいればお前は大事なものを忘れたりしない。」
「・・・大事なもの?」
この人はすごい。俺は素直にそう思った。きっとそんな俺の想いはまだまだ浅いんだろうけど。
「そ、大事なもの!もうすぐ俺達引退だ。そしたら一成とは友達になりたい。」
先輩は嬉しそうに笑う。
「じゃあ、帰るわ!」
先輩は急に立ち上がる。それを見て俺も立ち上がった。
「じゃあな!」
「お・・・お疲れ様です。」
先輩は行ってしまった。
負けたんだ、先輩。団体戦で負けるって、きっときついんだろうな。主将が射精しなければ負けないのに。
俺は再びブランコに座り込む。しばらく、考えていた。
翌日、俺はまた学校を休んだ。親に心配された。学校に行って話そうかと言われたが、そんなことしたら尚更行けなくなる。来週からはちゃんと行くと約束し、無理やり休みにさせてもらった。
夕方、俺は外に出た。ただの散歩のつもりだった。
昨日國保先輩と話した公園を通って、一成先輩に怒鳴った道を通った。まるで何かから逃げるように、下を向いて歩く。
「多分あいつがいればお前は大事なものを忘れたりしない。」
國保先輩の言葉を思い出していた。一成先輩がいれば・・・俺はそんなことを考える。この道を歩いて行けば学校に行ける。踏み出したい気持ちと、戸惑う気持ちがこみ上げてくる。
どうしてこんな気持ちが出てくるのだろう。俺はもう辞めたい。そう思ってたはずなのに。
「大輝。」
いつの間にか俯いていた俺はその声に気が付いて前を向く。数メートル向こうに一成先輩がいた。
肩を揺らして、汗をかいている。ジャージで、胸元を大きく開けて、息が荒かった。
夕陽が俺達を照らす。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
2人とも見つめ合ったまま動かずに、何も言わない。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
俺は瞳に涙を溜めて、泣くのを堪えていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・練習。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・いくぞ。」
「・・・・・・・・・はい。」
たった一言、言葉を交わし、俺は涙を流した。
完
はるか昔の青春時代、逝かせ合い射精決着レスリングを想像しながら毎日オナニーしてたことを懐かしく思い出させてもらいながら、リアルで勃起しながら、読ませていただきました。
普通にありそうな高校を舞台に、絶対有り得ない部活というストーリーで、当たり前なことながら、突っ込みどころもあって、そこがまた楽しく、そして、大輝、剛、一成先輩、國保主将はじめ、悪キャラの登場人物に至るまで、そのすべてに、作者の愛が感じられて、すごくいいなあと思って、何度も読み返してしまっています。
大輝が、一成、國保のさりげない励ましで、部活に戻る決意ができて、まだまだこのストーリーが続くこと、うれしかったです。
できれば、大輝たちが2年になり、3年になり、引退するまで続く大作になってほしいと切望しています。
season3も、めっちゃ楽しみにして、アップを待ってます!!
勝手に想像して、多分season3は、冬の大会までということになるのかな?
大輝、剛、隆史、一成はじめ部員たちの、人間関係、男闘勝負の絡み合い、どう進展していくんだろうか?
國保の引退で一成が主将になって、冬の団体戦、勝てるんだろうか?
大輝と剛は、練習試合で、どっちが強くなってるんだろうか?親友関係とライバル関係はどうなっていくんだろうか?
春樹は、どうなるんだろう?
大輝は、冬の大会で葉野のライバルと対戦があるんだろうか?
等々、想像は膨らむばかりです(/ω\)
長々と書き込みしてしまい、すみませんでしたm(__)m
では失礼します
多分一番年上の読者さん
コメントありがとうございます!長いこと更新が途絶えてしまい申し訳ありません。
とても読み込んでくださっているようでうれしかったです!
各キャラクターのエピソードもちゃんと用意していますので今後の更新をお待ちいただければ嬉しいです!
現在ほかの作品を執筆中ですのでseason3は少し先になりますが楽しみにしていてください!
また遊びに来てくださいね!