出会い~粉雪


広いフロアに大きな怒鳴り声が響く。怒鳴っているのは会社でも古株の女上司だ。いつも誰かに標的を定めて、取るに足らない小さなミスをつついては、理不尽に怒鳴り散らす。言っていることは正論だが、大袈裟に怒るほどのことじゃない。しかし正論な分、大抵は反論できない。

怒鳴られているのは最近入社してきたばかりの男だ。

 

「またやられてるね。」

「あの人、最近入ってきた新人でしょ?」

「そうそう。かわいそー。早速目付けられて。」

「でも、なんか仕事できないんだって。この前私も挨拶したけど感じ悪いのよねー。」

俺の隣から小さな声で、そんな話が聞こえてきた。男はどう見ても怒鳴っている女上司よりも年上だが、何も言わずただ俯いているだけだった。

 

 

「よう。」

帰り、駅へとぼとぼ歩く男を追いかけた。少し早歩きで追いつくと声をかける。

男は少し驚いた様子で俺を見た。どう見ても俺の方が年下だけど、会社では俺の方が先輩で、つい先輩面してしまった。

「ああ・・・お疲れ様です。」

「負けんな。」

俺が一言そう言うと、きょとんとしていた男は恥ずかしそうに笑った。

「・・・はい!」

 

 

それが、悟との出会いだった。

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