泣いた~夏の朝日


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駅に着くころにはもう夜遅くなっていて、相馬駅は相変わらず人がいない。雨が少し強くなっていた。まさか自分の決意に反してまたここに来るとは思っていなかった。

 

タクシーもつかまらない。俺は電話でタクシーを呼ぶ。20分くらい待たされた。

女将さんに言われた病院に着いて、夜間の入口から中に入って、悟がいる病室を目指す。

 

ドアの前でまた迷った。本当に会いに行っていいのか。

さっきまで少しかっこ悪くても、そう思っていたのに、そう思うこと自体かっこつけているみたいで、自分が都合よく考えているだけなんだと思い始めた。俺はいつもこうやって後ろ向きに考えて、自分を孤独に追いやって、悲劇を演じる。俺がドアを開けるために必要な理由は、新幹線の切符まで買ってここに来た、それくらいだった。そんなことしか思いつかなかった。悟に会って、都合のいい顔して、心配だからとか何とか言って、適当に帰ればいい。そうやって軽く考えようとしたけれど、俺を止めてほしい、また俺に告白してほしいい。そう思う自分もいたことに、俺は目を背けた。

そして俺はドアを開ける。

 

中は4つベットが並ぶ部屋。他には1人しかいなくて、他の2つは空いていた。手前には老人がいた。うっすら明かりがついていて、カーテンの外に名前が書いてある。奥にいるのが悟だろう。そっちもうっすら電気が付いている。俺の鼓動は落ち着かない。俺はゆっくり、奥へ行く。悟のベットが見えてくる。

そして、顔が見えた。久しぶりに見る悟の顔。

 

悟は寝ていた。

 

その姿を見て俺の緊張は一気にほぐれた。俺は、ゆっくりと、大きくため息をつく。そして、現実を知った。

俺はその部屋を出て行った。

 

 

俺は部屋の外のベンチに腰掛けていた。俺のすぐ隣に悟のいる部屋のドアがある。

悟は、きっと大丈夫だろう。女将さんが言うほど重症ではない。点滴もチューブもつながれていなかった。いつも通り、眠っているだけだった。

 

俺は、気が付いた。自分自身に漠然とした。ベンチに座ってただ一点を見つめていた。

 

向こうから走る音が聞こえる。振り向くと、女将さんがこっちに向かってくる。心配そうな顔をして、必死な様子だった。

「成樹君?悟ちゃんは?」

「ああ、あの・・・中に。」

俺が立ち上がりそう言うと、女将さんは乱暴にドアを開けて中へ入って行った。

俺には目もくれず、ただ悟を心配していた。その姿を見て自分のことが尚更情けなくなった。

俺は再び座り込む。

「悟ちゃん!」

病室の中から声が聞こえる。

「悟ちゃん?」

「あ、女将さん?」

悟の声がする。

「もう!大丈夫なの?」

「なんだ、びっくりした。来てくれたんですか?」

「びっくりしたのはこっちよー。もう本当に心配したんだから!」

中のやり取りが、静かな病院の廊下まで漏れてきた。俺は耐えられず、ロビーのベンチへ移動した。

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ベンチに座っている俺。外の雨の音が聞こえる。

気が付くと、頬を涙が伝っていた。ここまで来て自分の馬鹿さ加減に、俺は限界を感じていた。

「成樹。」

その声を聞き間違えるはずもない。悟だった。俺は悟の方を向くこともできなかった。頬を伝った涙を袖で拭き、だらしなく寄りかかっていた体を少し起こした。わざとらしく首の後ろを掻いたりして誤魔化していた。

「ああ、いや、女将さんが心配だって言うから・・・今日中に着くなら俺が来なくても良かったな。」

俺は悟の方を見ないまま、苦笑いをしてそうごまかした。鼻をすする音が俺が泣いていたことを物語る。

「俺のこと心配してくれたのか?」

悟は面白おかしくそう言った。どこか嬉しそうだった。しかし、俺はその言葉に何も返せなくなる。

「俺が死んだと思って泣いてたんだろ?」

「・・・・・・そんなんじゃない。」

そう。確かに俺が泣いていたのはそんなんじゃない。これがより一層俺を苦しくさせた。

「あはは、あっそ。」

悟は嬉しそうに笑いながら俺の隣に座って来た。

「久しぶりに顔見せろよ。」

悟は俺の顔を覗き込む。

「やめろ。」

俺は焦って立ち上がった。悟に背を向ける。どうしていいかわからなかった。

「成樹?・・・何かあったのか?」

悟の口調が変わる。少し心配そうだ。

「俺のこと怒ってんのか?心配かけたなら謝る。本当は連絡しようと思ったんだ。毎日、何度も考えだけど、お前の気持ちを考えて・・・。」

「もういい。・・・もう優しくするな。」

悟の言葉を遮るように俺はそう言った。

 

俺はさっきまで目を背けていた自分自身に、気が付いた。

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「どうした?何かあったのか?」

背をそむけたままそう言う俺に、心配そうに声を掛ける。

「俺は自分に正直なだけだ。」

俺の頬を次から次へと涙が伝う。

「俺に好きなだけ甘えればいいだろ。」

悟はいら立った様子で俺の肩を掴み、無理やり俺を振り返らせた。

 

 

そして俺にキスしようと顔を近づけてきた。

 

 

俺は悟の胸ぐらに両手をあて、制止した。そして悟の顔を睨む。その時になって初めて悟の顔を正面から見る。懐かしい気持ちが溢れてきた。俺の顔はきっとひどかったと思う。目は腫れあがり、頬は涙で濡れていたと思う。

「やめろ・・・俺にそんな資格ない。」

「じゃあ、何で来た?」

「俺のためだ!」

俺は両手で思い切り悟を押し返す。思わず叫んでしまう。

「・・・・・・お前にかけてほしい言葉があって・・・ここに来た自分に気が付いた。また告白でもされて、漫画みたいなセリフ言われて、俺は泣きながら帰って。・・・そうでもしないと俺は自分が大嫌いだから。誰かが俺のことをかわいそうな奴にしてくれて、悲しい運命なんだって思わせてくれないとただ自分が嫌いになって行くだけだから。・・・・・・だからお前に期待した。お前のことが心配だった訳じゃない。」

俺は泣きながら、必死に話す。話しながら、自分のその姿に唖然とした。とことん自分が嫌になった。

「・・・・・・最低だろ?」

俺は悟から眼を逸らし、痛々しくわざとらしく笑って見せる。

「お前の気持ちに答える気なんてないくせに、電話にさえ怖くて出られないくせに。」

「もういい。」

悟は俺の言葉を止めようとする。

「俺はそう言う男なんだ。お前は俺のことなんか知らない。」

俺の声はどんどん荒くなって行く。

「卑怯で最低なクズだ。俺にはお前を愛する資格なんか・・・!」

悟は俺の言葉を止めるように、勢い良く俺を抱きしめてキスしてきた。一瞬キスされたかと思うと、唇を離し俺の頭を抱え込み、深く抱きしめる。

「離せ!」

俺は悟から離れようとするが、悟は本気で俺を抱きしめる。

「どうでもいいだろ!」

必死になって悟の体を押す俺に、悟は一言だけそう言った。その瞬間、俺は抵抗を止め、肩を震わせて泣きだした。悟は力を緩めることもなく俺を抱きしめ続けてくれた。俺は自分の両手を悟の体に回し、胸に顔をうずめて泣きじゃくった。

 

久しぶりに誰かのぬくもりの中で泣いた。

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