あれからどのくらいか経った、ある夏の暑い日。
俺は女将さんの店に向かって歩く。遠くに見えるお店は昔と何も変わっていなくて、懐かしい面々が忙しく準備している。
「成樹君何時に着くって?」
「ああ、女将さんいいよ、俺達が運ぶから!」
「女将さん炭に火つけるから団扇貸して!」
「悟!成樹迎えに行くついでに氷買ってきてくれよ!」
店からは忙しく皆の声が聞こえる。その声ややり取りが懐かしい。俺は嬉しそうに微笑むと歩いて店へ向かう。その姿に皆が気が付いた。
「あ!成樹!」
そう言うと皆が一斉に俺のもとへ走って来た。女将さんも店の外に顔を出す。
「久しぶりだな!」
「なんか大人っぽくなったっていうか、老けた?」
「なんだよ、大人ぶりやがって!良く来たな、このやろー!」
皆肩を組んで俺を歓迎してくれる。まるで昔からの友達みたいに迎えてくれた。
「ほらー!日が暮れる前に準備できなかったらお金取るわよー!」
女将さんの声が響く。皆声を上げて店に戻って行く。
「お前のために今夜は店貸し切りだってよ!早くお前も来い!」
皆が俺にそんな言葉を掛けて走って行く奥に悟の姿が見えた。店の前で女将さんと俺を見ている。
悟は皆に背中をたたかれ何かを言われている。そして恥ずかしそうに俺の元へやって来た。
俺はその場で立ったまま、悟を待っている。何年振りだろう。
「・・・よう。」
悟が恥ずかしそうに言う。
「おう。」
俺は素っ気なく返す。
「・・・・・・彼氏できたか?」
悟も素っ気なく聞いてきた。
「いや。お前は?」
「俺、いないから・・・・・・じゃあ付き合うか?」
悟のその言葉に俺は声を出して笑ってしまう。すると、悟も笑った。
完